2011年11月TIMEを読む会

WHY GERMANY CAN'T SAVE EUROPE, MUCH LESS THE WORLD

With the euro-zone debt crisis worsening and more than a few angry voters at home, Angela Merkel is being squeezed on all side.
Harry Truman famously placed a plaque on his White House desk that read THE BUCK STOPS HERE. The motto was a pledge of the President's commitment to the U.S., an admission that responsibility for the country rested right there, in that office, on his head. Today, across the Atlantic in Berlin, German Chancellor Angela Merkel could well have a sign on her desk that reads THE EURO STOPS HERE. It's a problem for Europe and the world that she doesn't.
The fate of the euro and its promise of an integrated Europe--one that can strengthen rather than weaken the already precarious...

ドイツがヨーロッパを、ましてや世界を救えない訳は・・・
ユーロ圏の債務危機は悪化し、ドイツの有権者の怒りは高まり、アンジェラ・メルケルは四面楚歌だ。
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ハリー・トルーマンはホワイトハウスの机に、「責任はここで止まる(THE BUCK STOPS HERE.)」という標識を置いていたのは有名な話だ。そのモットーは、大統領の米国に対する責任を誓ったもので、国家に対する責任はまさにここに、つまり大統領執務室に、大統領にある、という引き受け方を表現している。今、大西洋対岸のベルリンで、ドイツ首相アンジェラ・メルケルは自分の机に、「責任はここで止まる(THE EURO STOPS HERE.)」と書いた標識を置いているだろうか。ヨーロッパ、そして世界にとって難儀なことに、実はそうしていないのだ。

ユーロの運命と統一ヨーロッパが与えた期待、つまり既に不安定になっている世界経済を弱めるのではなく強くするという期待は、メルケルの身に重くのしかかっている。メルケルのドイツはユーロ圏内の最大で最も影響力を持つ経済であり、ユーロを支える基盤であり、ユーロを存続させられる資源と強靭さを持つ唯一の加盟国だ。ヨーロッパが債務危機に転落し、世界経済とユーロそれ自体の回復を脅かしているので、メルケルの動向は衆目を集め、ドイツのリーダーがヨーロッパの改革、修復、再生への道を指し示してくれることを望んでいる。

メルケルはその役目を今のところ果たしていない。実際に、過去数週間、債務問題での対立、市場の混乱、そしてついにはヨーロッパ内で4番目の経済力を持つイタリアの信用格付けが下落したことで、政治的・経済的に考えて、ドイツがヨーロッパを救ってくれることなどあてにできないと、世界はさらに確信した。過去2年間、最初にギリシャが、次にアイルランド、ポルトガル、スペイン、イタリアと、次々に危機に転落したので、救世主きどりで、他に打つ手がないからといってユーロ圏国家に金融救済基金を提供し、ユーロ圏のより深刻な財政統合がもたらす損失に、ドイツが責任を持つことにメルケルは乗り気ではない。例えば、全加盟国が支持した『ユーロ債』の提案をメルケルは拒否した。ユーロ債は危機のリスクと打撃をさらに拡大しかねないだろう。

その理由は理解できる。通貨統合の平和的役割についてヨーロッパのリーダー達の誰もが美辞麗句を語るのだが、実際には、各国のリーダー達はそれぞれに違った利益とゴールを持った17の異なった国家の利益を代表している。債務危機がジリジリと焦げ付く中で、各国の利害は露骨になった。この数週間、ヨーロッパ救済基金の力の拡大(規模ではない)など、ユーロを守るためにとった中途半端な対応に対して、連立与党内からのほとんど反乱に近いものにメルケルは直面した。9月9日に欧州中央銀行常任理事会から辞任した最も尊敬を集めるエコノミスト、ユーゲン・シュタルクなどドイツ国内の多くの有力な意見でさえ、危機を脱出する道は、より強固なヨーロッパの金融的政治的統合だと言っている。

内部対立が多ければ、それだけ債務危機が深刻になる。ギリシャは債務不履行へと螺旋的転落をしている。それはもはや不可避であり、ヨーロッパは自力再生を遂げるために、痛みを引き受け前進すべきだというエコノミストもいれば、最悪の事態には、リーマンショックのような崩壊が起き、金融市場を麻痺させ、世界を再度不況に突き落すかもしれないと恐れるエコノミストもいる。そうなれば米国が自国の回復や失業率の改善を行うことはほとんど不可能になるだろう。ヨーロッパと米国は重要な貿易相手国なのだから。「ヨーロッパはどうしようもなく破滅に向って進んでいる」とエコノミストのケン・コーティスは警告する。「そしてもしそうなれば、安全な場所などまずないだろう。誰にもね」米国財務長官ティモシー・ガイトナーは9月中旬に開催された欧州財務相会談に招かれて、各国指導者に対して、議論はやめて債務危機に対処する強硬手段を講じるように説得したのは無理もないことだ。(「米国の問題を何とかしてから我々を批判しろよ」という声もあった)

誰もが考える問題は、なぜドイツがリーダーシップをとろうとしないのかだ。その答えは歴史に根差している。ドイツ指導者達が近隣諸国を支配しようとした歴史は、しっくりと決着していないので、今日でもまだヨーロッパを外交的・経済的に制圧しようとしていると見られることを、ドイツ人は恐れているのだ。ヨーロッパ統合とユーロ(共通通貨)を、そもそもドイツ人が歓迎した理由がそれだ。

しかし好むと好まざるとに関わらず、ドイツはヨーロッパを席巻している。他のヨーロッパ諸国、例えばフランス、イタリア、スペイン、英国などの経済大国は、大不況のためにグラついている一方で、おそらくドイツ経済は、冷戦終結後、1990年に東西ドイツが統一して以降、最も強くなっている。その理由として勤勉と節約が挙げられる。2008年までの高度成長期に、近隣諸国が、低金利をいいことに住宅建設ラッシュにうつつを抜かしていた時、ドイツは自国の経済改革に励んでいた。政治家は労働市場の自由化によって仕事を創出し、企業経営者は技術革新に投資し、組合は経費節減のために就業規則の変更を受け入れた。この経験はユーロ圏の債務危機の対処法に影響を与えた。

その解決は、ドイツの観点から言えば、ユーロ圏の脆弱な経済がより強くなることであり、言い換えれば、第二のドイツになれということだ。しかしなれるのだろうか。ドイツや他のユーロ圏加盟国からギリシャに対して、より厳しい予算削減や税率引き上げ、その他の緊縮措置を講じるようにとの執拗な要求が出ているので、ギリシャではどうしようもない経済的社会的大混乱へと、ますます近づかざるを得なくなっている。2011年第二四半期にはギリシャ経済は7.3%収縮した。怒って抗議する人々の姿は、アテネの通りで日常的に見られる光景になった。その一方で、ユーロを支えるためにそれまでとられてきた方策は、ユーロ圏全体に危機が拡大するのを止められなかった。大国スペインとイタリアが手ひどく影響を受けたので、通貨統合全体が崩壊する可能性もある。

メルケルは有言実行で、事態を救えるかも知れない。彼女は「もしユーロがつぶれたら、ヨーロッパはつぶれる」と公言したけれども、ユーロのためにドイツの資源を本気でつぎ込むことには(これは市場が望んでいるドイツの責任ある関わり方だ)、今のところ乗り気ではない。メルケルの腰が引けているのは、一つには、自国内での怒りを恐れているからだ。ドイツの有権者は、自分たちが懸命に稼いだユーロを、怠け者で、道楽で、無責任だと考えている近隣諸国を救済するために流用されることに反対している。証券取引ポータルサイト・ベルゼンニューズは金融専門家たちにとった9月のアンケートで、ドイツはユーロ債に賛成すべきかどうかを尋ねたところ、93%が「反対」と回答した。

だからこそメルケルにかかるプレッシャーは重くなる一方なのだ。メルケルの連立与党は最近あった議会選挙で敗北を喫したので、メルケルがユーロ問題に対して大胆な行動をとることが、ますます難しくなっている。9月7日にドイツの憲法裁判所が出した判決は、ドイツ議会により強い救済策の承認権を与えることによって、首相の自由裁量権をさらに制限した。「メルケルが抱えるドイツ国内の問題や影響力の弱体化によって、ユーロ圏の債務危機における強力な指導力を、彼女はほとんど発揮できなくなりました」とボン大学の政治学教授ゲルツ・ラングーツは言う。

しかしドイツはまた、ヨーロッパが大混乱へと落ちていくのを傍観していることはできない。ドイツの輸出産業は、ユーロ圏諸国の消費者が頼りだからだ(今年度のドイツ輸出品購買の40%がユーロ圏内だ)。だからもしユーロ圏諸国が破産すれば、ドイツ経済も同様に破産する。ドイツはすでに世界不況の下で苦しんでいる。ドイツGNP第二四半期の伸び率は前期比でわずかに0.1%だった。さらに、ドイツの諸銀行はすでに経営状態がひどく、資本増強が進んでいないと思われるが、債務危機が悪化すれば倒産することになるだろう。つまりドイツ経済は、ヨーロッパ経済と複雑に絡んでいるのだ。そして世界経済は、ヨーロッパ経済と絡んでいる。債務危機が通貨統合を完全に解体するという最悪の場合を考えると、次年度には世界経済は2%も収縮すると、キャピタルエコノミックスの首席エコノミスト、ジュリアン・イエソップは考えている。

そんな理由でメルケルは、対立する要求の狭間で板挟みになる。一方では、メルケルは怒れる国民をなだめなければならない。他方では、ドイツが新しい経済に起こす奇跡を潰してはならない。とりあえず彼女は、この二つの不安定なロープを何とか渡ってきた。もしドイツがユーロと世界経済を救済する気があるならば、通貨統合の背後にある夢を心から歓迎しなければならない。統一された、しなやかなヨーロッパ建設という夢だ。もしドイツにその気がないなら、ユーロは首相の机の前で止ってしまうだろう。トルーマンが覚悟を示した止め方とは違った風に。

AFTER THREE YEARS AND TRILLIONS OF DOLLARS, OUR BANKS STILL DON'T WORK

It was supposed to be a simple bargain. We would bail out the banks, and then they would bail out the economy. So why is it that things in the banking industry seem as dysfunctional as they have been since the financial crisis began in 2008? Share prices of the biggest American banks are plummeting as a spate of problems, including some in the mortgage markets that they've long tried to put behind them, come to the fore once again. Things are even worse in Europe, where banks are reeling from the sovereign-debt crisis. Moody's has downgraded the credit of two...

3年がかりで何兆ドルもつぎ込んで、まだ銀行は機能不全だ。
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単純な駆け引きのように思えた。銀行を救えば、経済も救えるだろうと。それなのになぜか、銀行業界の事態は、2008年に起きた金融危機以降から相も変わらぬ機能不全を呈しているようではないか。長い間隠そうとしてきた抵当市場の問題など相次ぐ諸問題が再び表面化するにつれて、米国最大銀行の株価は急落している。ヨーロッパではさらに事態は深刻であり、銀行は公的債務危機に喘いでいる。ムーディーズはフランスのトップ2大銀行の信用格付けを引き下げた。政府はこの銀行を支えているが、多くの人が予想しているように、もしソシエテ・ジェネラル銀行が破綻したら、ヨーロッパの脆弱な金融界を崩壊させ、世界経済へと衝撃は走るだろう。

米国の最大銀行、バンクオブアメリカは、すぐに同じ運命になるかも知れない。8月にウォーレン・バフェットから50億ドルの投資を受けた後でさえも、CEOのブライアン・モイニハンは繰り返し投資家に、彼の銀行は大丈夫だと念を押さなければならなかった(株が50%下がり、明らかに投資家は買おうとしていない)。元ウォールストリートのアナリストで現ブロッガーのヘンリー・ブロジェットによる最近の計算では、不良抵当証券と不動産取引による潜在的損失は2000億ドルほどにもなるという。バンクオブアメリカの見解は、この数字には異論があるとする。しかしもし損失がブロジェットの予測のおよそ3分の2だったとしても、バンクオブアメリカは姿を消すことになるだろう。

何でこんなにも早く逆戻りをしてしまったのか。10月で史上最大の銀行救済策が始まって3年になる。それは米国政府が議会承認を得て7000億ドルの不良資産救済プログラム(TARP)の第一弾を注入した時だった。米国政府の示した様々な対策は、たとえば連邦政府の保険付き預金口座から政府による不良資産買い上げまで、ついにほぼ10兆ドルにもなった。

多くの銀行には、対策は成功した。それ以降大手銀行は上手くいっている。大手銀行は3年前よりも資本をかなり増強したし、収益は(少なくともつい最近までは)上がっていた。しかしその他の銀行にとって事態は以前と変わっていない。銀行は重要な取り決めを守っていない。中小企業に融資する引き換えに、ウォールストリートを救済するという取り決めだ。銀行は需要がなかったのだと言う。しかし最近の調査によれば、米国の中小企業経営者の73%は、銀行の貸し渋りを受けていると言う。最悪の事態は、政府や個人投資家から担保付不良債権に対して起こされた一連の訴訟によって、銀行がまだ抵当証券市場の失敗の責任を完全にとっていないことが明らかになった。

現在、住宅価格が今年再び値下がりし、住宅ローンで抵当証券が差し押さえられる数が増えている。このような潜在的抵当証券没収は銀行にとって更なる損失になりうる。レイオフや支店閉鎖が再び始まっている。バンクオブアメリカだけでも、今年すでに6000人を解雇しているが、2014年までにはさらに30000の職を失くそうとしている。

これらすべて、「ゾンビ銀行」を恐れているエコノミストがいることをなるほどと思わせる。つまり、金融業界は政府の支援によってやっと生きながらえているが、経済を蝕みながらこれからも立ち枯れているのだ。間違いの一つには、銀行が自分の問題を何とかするだろうと信用してきたことかもしれない。TARP救済の間、直接に不良債権を買い取る代わりに、政府は銀行に資金注入する方法を選んだが、それは重役たちが資金を使って銀行を立て直し、融資を促進することを望んだからだ。このどちらも実現しなかった。「救済策で銀行はただ時間稼ぎをしただけだった」と、2008年危機を言い当てた数少ないアナリストの一人として評判のメレディス・ホイットニィは言う。「銀行の原価構成や抵当証券取引の基本的問題の解決に、何一つ役に立ちませんでした。ただ穴を塞いだだけでした」結果的に、訴訟問題の増加と住宅市場の下落が続き、差し押さえの急増につながった、とホイットニィは言う。まさに今その通りのことが起こっている。

2009年春に米国政府が行った銀行に対するストレステストが、財政危機の終わりの始まりを画したということは、通説になっている。国内の大銀行の半数以上が、最悪の経済不況を生き延びるだけの資金を有している、と政府は発表した。銀行株は急に売れ出した。2~3ヵ月のうちに、銀行は政府から借り入れた緊急TARP基金を返済し始めた。救済金は緋文字のようなものになっていたのだ。市場でのパニックは収束し、同時に銀行の収益は回復した。ゴールドマン・サックスを例にとれば、それに先立つ13か月間の収益が15億ドルだったのに比べて、2009年には130億ドルになった。 JPモーガンも総決算は110%上昇した。

しかしMIT教授でありIMF元チーフ・エコノミストのサイモン・ジョンソンによれば、ストレスが甘かったせいで第二波の銀行危機を開始させたかもしれない、という。「最悪のシナリオと呼ばれていますが、現実の累積赤字や訴訟による損失は、テストケースが予測したよりもひどいのです」だから本来の時期よりも早く、銀行は政府に資金を返済したのだ。結果として、収益や株売却によってねん出し、2009年と2010年の帳簿に入金した資金の多くは、銀行の自己資本率を引き上げるために使われたが、それは投資家や監査人が最優先だとしていたことだった。平均して、米国の4大銀行、バンクオブアメリカ、JPモーガン、シティグループ、ウェルズファーゴは現在、貸付残高の約11%に匹敵する資本を保有している(2008年末には9%だった)。いわゆる大き過ぎてつぶせない銀行に、国際銀行の監査人たちがもっと資本金を保有させたがっているのでこの傾向はさらに続くだろうが、最近、JPモーガンチェースCEOのジェミー・ディモンはこれを「反アメリカ的」と呼んだ。

問題は、銀行がより多くの資本を保有しながらも、なお貸し渋りをしていることだ。一つには、2009年と2010年の銀行の収益回復が架空のものでしかなかったことがある。例えば、2008年~2009年の米国大銀行における投資銀行部門の株式ビジネスの約50%が自身の資本再構築の努力によって創出された。つまり銀行は増資のために自社株を購入しているのだ。これはまともな商法ではないし、少なくとも長続きする商法ではない。刺激策や様々な連邦準備金プログラムはこれ以外にも一時的な景気回復を作り出した。これらの方策が尽きれば、景気浮揚も同様に終わりになる。

さらにもっと大きな問題は、銀行の本来の業務の多く(例えば住宅金融)は、金融危機の時期に一掃され、まだ回復していない。

ほとんどの大銀行の収益は、抵当物件を計上すると、金融危機前夜の時点から25%~35%下落する。大銀行の収益は上昇し続けるだろうと、ほとんどのアナリストは考えている。しかし収益増加のほとんどは、経費削減から生み出されるだろう、とホイットニーは言う。だから貸付額は縮小の一途だろうというのが予測だ。

貸付が少ないからといって、必ずしもリスクが少ないとはいえないし、それはまた別の未解決の問題を惹起する。銀行改革だ。ルーズベルト協会の上級研究員であり金融規制のエキスパートであるロバート・ジョンソンは、ドッド・フランク銀行改革法案は昨年議会で通過したのだが、銀行の会計報告書を可視化するのにほとんど役に立たなかった、と言う。例えば、金融派生商品は今日、他の銀行とリーマンブラザーズが結びついたタイプと、米国銀行とヨーロッパ銀行が結びついたタイプの2種類あるが、未だに銀行の財務表で充分に量的評価をされていない。「金融業界に異変が起きれば、どんな銀行のCEOも自行が安全だと証明はできません」とジョンソンは言う。「医療とは違って、我々にはまだ金融危機の伝播を止める力はありません」

だからこそヨーロッパ銀行の崩壊が米国の問題となる。もしヨーロッパ銀行が破綻したら、リーマンの損失が世界金融業界に影響を及ぼしたのと同じ方法で、その金融派生商品の損失は米国銀行に影響する。そして推測は困難かもしれないが、ヨーロッパ銀行業界は米国よりもずっと脆弱だ。ヨーロッパの危機の根源は異なっている。なぜなら、それは個人の住宅購入者に関するものではなく、ギリシャ、イタリア、ポルトガルのように国家全体に関わり、その危険な債務は銀行が保有しているのだ。全ヨーロッパ的金融政策が欠落しているからこそ、互いの国家の救済策が困難になっているし、それが同時にヨーロッパ危機に対する統一的な解決策を提起することを困難にしている。さらには、3年にわたってヨーロッパの銀行は、米国銀行が保有しているのとほぼ同額の資本を再構築することを、各国政府に強いられてはこなかった。2010年末現在で、平均的なEU銀行は、貸付残高の6.5%をカバーするだけの資本しか保有していない。この数字は、2007年末の5.9%からわずかに上がっただけだし、米国銀行の資金に比べればはるかに少ない額だ。平均して、EU内の14大銀行は、もし貸付の4.3%でも回収不能になれば破綻するだろう。ロンドン銀行間出し手金利(LIBOR:ヨーロッパ銀行間の貸付利率)は、この1年で最高になっている。

では如何にしてこの混乱から抜け出せるのか。ホイットニーらエコノミストは、抵当証券市場の正常化によって(米国銀行の危機は結局ここから始まったのだが)、銀行業界そのものを正常化するまでに長い時間が必要だろうと考えている。オバマ政権は、差し押さえ物件を強制的に一掃するなど、まったく乱暴な解決を考え始めている。

ヨーロッパでは、統合をより強化する必要があると主張する指導者もいる。ヨーロッパの銀行は、国家によって財政的に補償されている。ヨーロッパには、ヘンリー・ポールソンやTARPは存在しない。多くの者はそれを変えたいと考えている。「統合をより強化すべき時だと考えています。EUの解体ではなく、より強いEUが必要です」と欧州銀行連盟議長ギド・ラボエトは言う。「大いなる飛躍を遂げる必要があります」もちろん財政的に健全なドイツのような国家の説得は難しい。ギリシャのような浪費国家をなぜ支える必要があるのか納得できないし、そんな脆弱な国家や銀行には財政的関わりを持ちたくない。

米国に話を戻すと、ジョセフ・メイソンは、ルイジアナ州立大学EJオーソ・ビジネススクールで銀行業を研究しているのだが、すべきことは銀行に即座に不良債権の損益を出させることだと言う。次々と小出しに出てくる訴訟に対して、銀行に正義を行わせることはもういい、とメイソンは言う。全抵当証券評価損を出させるようにと、州政府機関に対して彼は提言している。言い換えれば、一挙にすべての痛みを出せば、組織は結果として救われる。

もちろん、これによる直接的打撃は収益を大きく損なうだろう。銀行はこれを望まない。しかしメイソンによれば、投資家に金融機関の健全性を信頼させることになるし、そうすれば銀行株を購入するようになり、銀行が必要とするときには資金を増強できるようになる。「金融危機に陥ってから4年になり、新たな損益はまだ出てきているようだ」とメイソンは言う。「事態は少しも改善されていない」この点では、ウォールストリートとメインストリートの意見が一致することだろう。

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